「・・・なんで、メイシー?」

「あたしは、ハーウッドに誘われてここにきたから、ハーウッドがいなくなったら戻るのは当然じゃない?」
「私は? 置いてくの?」
「あんたの為でもあるんだよ。いつまでもあたしみたいなのが一緒にいたら、ずっと前に進めないでしょ。それに・・・」
「それに?」

「こないだ生まれたばっかの子が、もう大きくなって家を出た。あんたも年をとる。でも、あたしはこのまま。ずっと。それはすごく淋しいよ」
「・・・」

「サブリナ、あたしは死んでるんだよ。ここの居心地がよくて、つい居座っちゃったけど、やっぱり死人は墓に戻るのが自然だよ」
「決心、固いの?」
「うん」
「どうしても?」
「どうしても」
「・・・そう・・・」

メイシーを復活させてから、彼女の寿命バーは1ミリも動いていません。ずっと、若年のままです。
子供たちが成人して出ていったように、ハーウッドが亡くなったように、メイシーはいつまでも置いて行かれる側です。

ずっとそのままでいて、なんて言えるわけはないんです。いつか、サブリナも彼女を置いていくのですから。

「ねえ、最後にお祭り行こう!」

沈んでしまった空気を払うように、メイシーはサブリナを冬のお祭りに誘いました。

この2人でお祭りに来たのは初めてですね。

せっかくなので、写真を一緒に撮って、スケートして。
メイシーは漂っているだけですけど(笑)

「懐かしいね。よく来たもんね、ここ。奥さん2人、ハーウッドは両手に花だったよね」

「・・・知ってたの?」
「やっぱりか・・・うん、なんとなく」

「ハーウッドに会った時にね、もの凄くキスしたいと思ったんだ。一緒にいたいって思った。おまけに、あたしの手の結婚指輪。記憶がなくなってても、そりゃ変だと思うよ」
「・・・メイシー」
「ハーウッドが言い出したんでしょ? あんた、たまに不安そうだったもん」
「・・・黙っててごめんなさい」

「あはは、いいよ。だって死んじゃった人間だし。それに、もしそこで前の奥さんにうつつを抜かすハーウッドだったら、アタシ、好きになってなかったよ」
「・・・」

「多分、ハーウッドはさ、淋しい子をほっておけないんだ。だから、若い時に死んじゃったアタシのことも気にしてたんだと思うよ。そういうヤツ・・・いいヤツ」
「ねえ、もしハーウッドをメイシーみたいに・・・」
「やめときな。もしそうできたら、多分、あたしはすごく嬉しいけど、それは不毛だよ」
「でも」

「いい? あたしとあいつの仲は、あたしが死んだ時に終わってるの。だから、それを掘り起こしちゃいけない。こういうふうになったら死なないから、多分いつかおかしくなる。期限が決められてるから、きっと楽しいんだよ。オバケが言うこと、信じなさい」
「・・・でも」

「なら、あたしとハーウッドのお墓を並べておいて。そしたら、いつでも見つけられるから。それで、あんたが死んだ時に、今度は三角関係ってのをやろうよ。約束」
「そんな約束、初めて聞いた」
「あたしも初めて言った」
「なかなかハードな関係ね?」
「仲が良すぎてやんなっちゃうね」

「・・・」

夕方になり、雪が降ってきたので帰宅。

朝はオーギュストとの最後の食事で、夜はメイシーと最後の食事。
なかなか辛い1日です。

「サブリナ、さっきの話だけどさ、あたしはあんたがハーウッドを取ったなんて思ってないんだよ? むしろ、ハーウッドに家族をくれて、そしてあたしにもくれて、ありがとうって思ってる」
「そうなら嬉しい」

「ほんと楽しかった。チビの面倒みて、ちっこいのに本を読んでやって、おっきな子と枕投げして。あたし、ほんと、楽しかった」
「メイシー・・・やっぱり行くの?」

「うん、だからこそ、そろそろ戻るよ。これ以上いると、欲が出て、ここに居続けたくなっちゃうからね」
「・・・私、1人になっちゃうわね・・・」

「あんたは1人じゃないでしょ。子供たちがいる、生きてはないけど、ハーウッドもあたしもヘンリーもいる。姿が見えないからって、一緒にいないわけじゃないんだよ。むしろ、あんたが自分のこと1人だって思っちゃったら、あたしもみんなも、あんたのそばにいられなくなるよ」
「・・・」

「サブリナ、楽しかった過去に執着しちゃダメ。いつかイヤでも全部過去になるんだから、新しいもの探した方がいいじゃん?」
「・・・うん」

「あたし、あんた大好き。家族みんな大好き。同じ『クレイ』で本当に嬉しい。だからね、ありがとう、サブリナ。あんたがしわくちゃのバーサンになったら、また会おうね」
「・・・しわくちゃになって、みんなに見つけてもらえなかったらどうしよう」
「ちょっと、それは家族を見くびりすぎ!」
「ふふ、そうか。そうね」

「メイシー、ありがとう。ほんとはまだここにいて欲しいし、あなたがいなくなっちゃったら、きっとまた泣くけど、でも、ちゃんと見送る」
「泣いたっていいじゃん。涙がコップ何杯になったか、今度会う時、教えてよ」
「メイシー、大好き・・・淋しいよ・・・」

「アタシも淋しいよ! でも、行くね」
「・・・うん」
「じゃあ、バイバイ。またね」

サブリナに別れを告げて、メイシーは骨壺に戻りました。もう操作することも叶いません。

ちょっとワケありのゴーストだったけど、一緒に生活して、子育てして、遊びに行って、ハーウッドと同じくらい、サブリナの家族でいてくれた人でした。

復活させたのが本当に彼女のためだったかはわからないけど、それでも、ともに過ごした日々は幸福だったと思うのです。

かつて、ハーウッドと愛を語り、昨日、3人で談笑したホットタブ。

1人は気楽ではあるけれど、空間が淋しい。

1人になった朝、サブリナがいつものように朝ごはんを食べようとすると、突然ヘンリーが現れて、食卓をともにしてくれました。
お母さん大好きな子だったので、何か感じ取ってくれたんでしょうか。

その後、昼近くまで母のそばで本を読み、静かに戻っていきました。

気温は高めだけど雪がちらほら降る中、3人の骨壺をもって、サブリナは丘の上の墓地に出発。
喪服で行こうかとも思ったけど、そうすると本格的に悲しくなりそうで、いつもと同じ恰好で。

中央にハーウッド、両脇にメイシーとヘンリーを埋葬しました。
いずれ、サブリナが亡くなる時には、ヘンリーのお墓を少し動かして、サブリナがハーウッドの隣に行く予定。

メイシーとの「三角関係」の約束があるからね。

しかし、ハーウッドの墓標は立派ですね。生涯の願望も達成したし、彼の人生を褒められているようで嬉しいです。

「ハーウッド、お別れを言えなかったから、今、話すね。

私、あなたの物語を書いているの。書き出してみると、色んなことがあったなあって思う。
あっという間で、もっと他にアレコレできなかったかなとも思うけど、うん、でも、いい思い出ばかりだから、それでいいかな。

あなたもそうだといいんだけど」

「あと、誕生日プレゼント、ありがとう。似合う?」

ハーウッドの遺品の中に、サブリナに渡すはずだったネックレスがありました。
以前、アートスタジオで作ったものです。

彼の言っていた「作りたいもの」は、妻への誕生日プレゼントだったのですね。

それには手紙が添えられていました。

誕生日おめでとう。
ボクの一番好きな色の石を、一番好きな君に。
アメジストは安らぎの石。
たとえボクがそこにいなくても、永遠の愛と慈しみを君に送るよ。
いつも君とともに笑顔がありますように。

愛しのサブリナ
ハーウッド・クレイ

「覚えておいて。笑顔の君が素敵だったんだ」

ハーウッド、まだ心から笑えそうにないけど、ちゃんと、取り戻してみせるわね。

あなたは、メイシーやヘンリーと、あっちで待ってて。
私はこっちで、みんなと楽しくやってから行くつもり。

きっとこれからも色々なことがあるから、ちょっと先になりそうよ。
報告しに来るわ。今度は春に、花を持って。

じゃあね、ハーウッド、また。

・・・私はこれから、どうしようかな・・・。

サブリナ・クレイは、今日、1つ年をとります。

おしまい。

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