子供たちの手が離れ、大人たちは大人たちの時間を過ごすようになった日々。
ハーウッドは、親友ファンの娘グリゼルダに、父の遺言を伝えることができました。
そして、寄宿学校に行っていたオーギュストが高校生になって帰還。同じ頃、サブリナに4人目の子供が宿るのでした。
春だけど、まだちらほらと、だんびら雪。
「こ・・・ども?」
「うん」
「そうか・・・そうか!」
作った本人もビックリ、4人目の子供を授かったクレイ家。
「え! 赤ちゃんできたの! すごいねサブリナ。男? 女?」
「まだわかんないわよ、メイシー」
「うーん、どっちがいいかなあ」
「ハーウッドは男の子がいいみたい」
「じゃあ、男だね! 男に決まりで!」
「気が早いわねえ」
いやもう、メイシーがものすごく喜んでるんだよね。
「ねえねえ、ぬいぐるみ買った? カミーユに知らせた? ま、なんでもいいや。早く生まれないかな。楽しみだねえ」
赤子ブーム到来! みたいになってる。
末っ子の座を奪われるオーギュストは、いじけてるかと思いきや、買ってもらったバイクに夢中です。
ほんと、この子は、とりあえず目先の楽しいことが楽しいみたい。ある意味、サブリナの子だなーって感じでもある。
ところで、先にバイクを与えてしまったからか、なぜか運転を教えることも教えてもらうこともできず(行動が強制キャンセルされる)、無免許ではないか・・・という気もしなくもない。
ま、ツインブルックだし、うるさいこと言われないでしょ、という根拠のない安心感。
そして。
もう4人目なんだから、いい加減、慌てなくていいじゃん、と思うけど、陣痛には天地がひっくり返ったかのように大騒ぎして。
ハーウッドの希望どおり、男の子誕生です。
名前はヘンリー。彫刻家のヘンリー・ムーアから。
今回は、高校生以上が5人いるからね、誰かしらが世話してくれて、サブリナも楽ちん楽ちん。
案の定、みんなに可愛がられまくられてます(笑)
輪郭的にハーウッド。髪の色もハーウッド。
この家は、父母のパーツがミックスされた子が出てないので、多分、ほぼハーウッドでしょう。
となると、高校生くらいになったら、ハーウッドの若いころの顔が見られる・・・くふふ、こういうのが楽しみなんだ。
慶事が続きます。
今度は、カミーユの成人バースデイ。
真面目で頑張り屋さん、うちのお手伝いもよくしてくれる。
特に掃除関係は、彼女のおかげで、だいぶ助かりました。
間が悪くて損ばっかりしている気がするけど、明るく前向きな良い娘に育ってくれてな・・・よよよ。
いまだ、コレ! といったヘアメイクをしてあげられてないけれど、筋トレしていて、すらっとしたいいボディだからね、へそを出していきましょう。
全然関係ないけど、海外ドラマとか見てると、むこうの人って、普段着から、けっこう胸とか腹とか出してるよね・・・日本人のおばちゃんとしては、「んまーはしたない」とか「風邪ひくよ!」って思っちゃうんだけど、文化の違いかね。
そりゃまあどうでもいいか。
とにかく、カミーユが大人になりました! わーい!
家族揃って卒業式へ。
今回は雪が降っていないので、ちゃんとアカデミックドレスで、セレモニーって感じ。
そして楽しみな成績発表。
カミーユも総代でした! クレイ家2人連続だ。
クラスメイトからは、「1番世界を支配しそう」だそうですよ(笑)
そう見えるのか。よし、やっておしまい。
彼女が選んだ職業は、生涯の願望にあわせて、警察官。
法医学の方に行く感じですね。絵描きスキル・論理スキルともに高いし、将来有望です。
ほんと、この子は堅実な方へいくなあ。
何はともあれ、おめでとうね、カミーユ。
成人し、仕事も決まったとなると、そろそろ独立を考えなくてはいけません。
彼女が独立した時に住む家は、サブリナが独身時代に住んでいた家です。
隣には空き地があって、かつて、スカウト・サージェントが「物騒」と心配していた場所ですね。
現在も空き地はありますが、オーギュストが独立する時に、そこに家を建てて住まわせばいいかなーと思っています。
気が早いけど、その時のために、去年の秋に積もった落ち葉を掃除する両親。
世渡り上手と無邪気の2人に挟まれ、かつ、真面目であまり妙な行動をしないので、クレイ家では目立ちこそしませんが、2人にとっては、大切な大切な子供なのです。
特に娘は1人だしね、本当は家から出したくないんだよう。
独立と言えば、ファンの家を娘のグリゼルダに引きわたす時期が近づいてきました。
おお、なんだか急に忙しいぞ。
そのまま渡してもいいんだけど、やっぱちょっとゴーストハウスじみているので、お祝いがわりに少し改装しましょう。
家自体は、ムキだしのバスルームをちゃんと「ルーム」にし、電化製品を少しグレードアップ、錆びたり痛んでいる部分を補修しました。あんまり変えるとファンの面影が消えちゃう気がして、あくまでほんの少しの手だしです。割と何でもあるしな、この家。
まだボロっぽいけど、住むにはそれなりに快適になったはず。
ただ、焼け焦げた木は全交換しました。若い女性が住むのに、さすがに枯れ木まみれは可哀想。
あと、街はずれでひっそりしているので、街灯をつけて、アジサイを植えたよ。
こう見ると、街が一望できるんですね、この家。
そして、実はハーウッドの元の家と直線的には近いんだねえ。お互いの家が見えるわ。
なんとなく、彼らの友情を感じてしんみりした。
ファン、ここに君の娘が住むよ。いい子だよ。
君と別れてずいぶん経つんだなあ。君は全然姿を見せてくれないから、ちょっと淋しいよ。
ああ、本当に時間が経ったね。
「シャカ・ブラァ!」
君はいつも楽しそうで何よりだよ、オーギュスト。
そんなこんな忙しくしてたら、あっという間にカミーユ引っ越しの日になってしまいました。
「パパ、ママ、行ってきます! がんばるね」
はやい。淋しい。
頑張らなくていいから、楽に生きて欲しい。
独立するにあたって気になるのは彼女の人間関係、主に恋愛方面ですが、いつぞやの卒業パーティでハートのついた子はいたものの、カミーユ自身が全然どーでもいいみたいな感じだったので、一旦リセットして、まっさらシングルの状態で送り出します。
多分、すぐに彼氏できると思う。友達も多いし、本当に本当にいい子だから。
なんかもう、あんまり写真撮ってあげなくてごめんね。それだけが心残りよ。
カミーユが去っていくのとほぼ同時に、長男フィリップに子供が産まれました! 初孫ですわ! 男の子!
※カミーユが可哀想なのは、こういうタイミング。なんか色々とかすんじゃうんだよね・・・不運というか間が悪いというか。
・・・って、婚約どまりで結婚してないんだけど。せっかく、ファミリー仕様の「エゴの巣」に住んでるんだから、さっさと結婚しなさーい! 孫を抱きに行けないじゃないかー!!
まあでも、今回のツインブルックはシングルマザーが異様に多いので、きっと街のトレンドなんでしょう。
にしても、早く会いたいね、孫に。
「もうすぐヘンリーが小学生か・・・ああ、いいな」
「どうしたの?」
「うん、こうやって、家族で一緒にいて、子供たちの成長を見守って、愛する奥さんとゆったり過ごす・・・これが本当にいいんだよ」
「そう?」
「・・・なんだろうね、昔は・・・毎日がパーティかサーカスみたいなもので、富とか名声とか、陳腐なくらいに色々持っていて、騒がしくて、落ち着かなくて、うんざりして。全部捨てて気楽だったはずなんだ。ああ解放されたって」
「うん」
「ファンに誘われてこの街に来た。メイシーと出会って結婚して、すぐに彼女が亡くなって・・・なんだかもう、全てが面倒になったんだよ」
「・・・」
「自分以外の・・・いや、自分自身のことすらね」
「でも、君はボクに関わってくれたね。投げやりに酷いことを言ったのに」
「そんなことあった? 記憶にないわ」
「じゃあ覚えておいて。笑顔の君が素敵だったんだ」
「結婚だって子育てだって、正直、面倒ばかりだ。でも、それでもいいんだ。面倒でも。君がそばにいるから」
「今日のハーウッド、わかりやすくていいわね」
「ははは、色々なことを難しく考えるのに使っている体力も時間もないからね。ボクは今、この上もなく素直だよ」
「・・・私も幸せよ。本当は1人でいる方が楽だけど、それでも一緒にいたいのよ。これは何なのかしらね」
「夫婦ってヤツじゃないかな」
「ねえ、私はもう1人くらい家族が増えてもいいと思うんだけど」
「さすがにもうムリだよ、奥さん。年寄りに無茶を言うね」
「そうかしら?」
「・・・ま、努力はするよ」
なるべく君が悲しまないように逝けるといいんだけど・・・もうこれ以上は、すぎた望みかな・・・。