ハーウッドとヘンリーが亡くなり、悲しみにくれるクレイ家。
そんな中、次男オーギュストが成人しました。
彼が独立するまで、約1週間。
ハーウッドが視界にいない状態にも慣れてきました。
でも、それと同時に記憶が薄れないように、サブリナは、現在、ハーウッドの伝記を執筆しています。
オーギュストが家を出るまで、あとわずか。
見た目は普通に戻ったクレイ家です。でも、まだ何かくすぶってる感じ。
サブリナは、家でぼんやりとテレビを観ることが増えました。
まあ、私がウェット気質なので、たまたまをそう感じているだけかも知れないけど。
メイシ―は、彼女の知りあいに呼ばれて出かけがちです。
「ママ、本当に平気?」
「平気だから、あなたは1人暮らしの準備をしなさい」
オーギュストはサブリナが心配なようで、よくおしゃべりに誘ってきます。
本当は家を出てほしくはないんだけどね・・・本当はね。
できれば、子供全員を呼び戻したいところだけど、親子ともども自立できなくなりそうなので、心を鬼にして成長を見守ろうと思います。
そんなことを考えていたら、長男フィリップに会いました。
「母さん!」
ああ懐かしい。
音楽キャリアな彼は、サブリナが炊き出しに行く夕方は仕事なので、なかなか会うことがなかったんですよね。
ほんと、久しぶりだ。
彼が家を出て1年近く・・・あの時、世帯には6人いたんでしたっけ。
この1年で、本当に色々なことが変わりました。
変化がイヤなわけじゃないけどね、それでも、思い出と変わらない顔に出会うとほっとします。
だいぶ楽にはなってきましたが、たまに悲しみがぶり返して、涙をごまかして自分を前に進める日々。
これまで、ほのぼの幸せ家族日記だったからさ、余計、振れ幅がデカイのよ。
♪♪♪♪
と、携帯の呼び出し音。
「サブリナ、ちょっと出てこれないか」
「・・・うん」
待ち合わせたのはボビー・サージェント。隕石落下と前後して老齢になっています。
ガタイの大きい人が老齢になって筋肉が落ちると、なんかものすごく「年とったなあ」と思います。
スーツをビシッとキメていたボビーも、細く薄くなって、少し弱々しくも見えます。
「最近、スカウトはどう?」
せっかく授かったサージェント家の一人息子も、隕石により死亡しました。
「まあ、元気があるとはいえないな・・・今は仕事で気晴らししているようだが、逆にそれが心配だ」
「そうよね・・・本当に、あの日は酷かったもの。忘れられるはずない」
「君は? サブリナ」
「うん、だいぶ落ち着いた。でも、そろそろ次男が家を出ちゃうから、また少し、淋しくなるわね・・・」
「・・・星を見ないか」
星を見るアクションってロマンスの方に分類されるけど、花を贈るのと一緒で、微妙にラブっぽくないんだなあ。あ、でも手を重ねるから、それはそれでアレか(どれだ)。
結構、解釈に困るアクションではあります。
でも、仲がいいカップルがやると、なんかすごく雰囲気が出るんだよね。
今回はカップルじゃないし、というか、そんなことより、雪が積もった中でやるのは腰が冷えそうなんですが・・・。
と、またどうでもいいことを気にするプレイヤーは無視しましょう。
「なあ、またうちに住まないか? スカウトも喜ぶ」
「・・・」
「もちろん、俺も」
「・・・ううん、私は私の家にいる。もう1人家族もいるし、みんなが帰ってくる場所を残しておきたいから」
「そうか・・・」
「でも、遊びに行かせて。それはいいわよね?」
「当たり前だろう? いつでも歓迎するよ」
「・・・ありがとう。ほんというとね、ちょっとだけ、心が揺れちゃった。私は弱いわね」
「いいんじゃないか、それでも」
「そうかな」
「君は君だ。弱くても、強くても」
ハーウッドが亡くなってから、ボビーは何度かサブリナを外出に誘ってくれています。電話もね。
彼との別れからサブリナの物語は始まり、そろそろ終わろうとしている今に至るまで、なんだかんだで付き合いが続くとは、当初は思っていませんでした。
サブリナも、彼の前では割と甘えられているような気がします。
きっと、ハーウッドとは別の愛情でつながれてはいるのでしょう。
たぶんそれは親愛ってもので、そこに恋愛感情があるかというと・・・どうなのかな。あるのかもしれないし、これからどうなるかもわからないけど、今は、きっと、このままの距離でいるべきなんだと思います。
個人的には、そういう人の存在は、時に支えになるとは思いますけどね。
オーギュスト卒業式を翌日に控え、最後の3人でのおでかけに出かけたビストロ、そこで、アラナ・ドリルに連れられた孫のアレックスに出会いました。
初めての対面です。
フィリップの幼い頃に似てるのかな。まだ分からないかな。
懐かしいなあ、フィリップもこうしてあやしたっけ。昨日のことのように思い出せる。
ハーウッドがいて、フィリップがいて、そしてアレックスがいる。
結局、ハーウッドは孫を抱くことはできなかったけれど、こうやってクレイ家は続き、限りなく薄くなっていても、そこにハーウッドはいる。
そうして世代が紡がれていく、それだけでも、このプレイを続けてきた甲斐があるというものです。
「アラナさんは、兄ちゃんと結婚しないの?」
「うーん。そろそろだと思うんだけど、なんか、今のままでもいいような気もするんだよね。特に不満もないし」
「そっかー」
「できるならした方がいいわよ、結婚。色々あるけど、きっと何かが見つかるから」
サブリナがそうだったようにね。
そして、オーギュストの卒業式。
なかなかアカデミックガウンが似合ってるじゃないの。
ただ、なぜか家を出た瞬間に普段着に着替えてしまい、セレモニー中もずっとその恰好でいたので、ちゃんとした写真はこれしかありません。
うーん、残念・・・というか、なぜ脱いだ。
兄や姉と同様、オーギュストも総代になりました。
クラスメイトからは、カミーユと同じ、「1番世界を支配しそう!」。
クレイ家は、世界の支配者一家にでも見えるのか(笑)
卒業セレモニーを終えたその夜、サブリナ、メイシー、オーギュストは、誰からともなく、ホットタブに集合しました。
彼らが話しているのは思い出話なのか、これからの日々のことなのか、どうでもいい出来事なのか。
会話の内容が何であれ、きっと彼らはこの夜を忘れないことでしょう。
いつでも平等に、朝はやってきます。
みんなで揃って食べる朝ごはんは、オーギュストの好きなチーズ豆腐ステーキ。
その後、もはや日課となった枕投げをして。
「じゃあママ、行ってくるね!」
オーギュストは独立します。
「淋しかったらいつでも呼んで。俺、うちが大好きだからさ、どんな時でも戻ってこれるよ! 遠慮しちゃダメだよ」
「・・・ありがとう、オーギュスト」
なんか、この子がこういう性格でよかったと、心底、思うわ。
「メイシーも、遊んでくれてありがとう! ママをよろしくね」
「・・・あんなちっこかった子が大きくなって。そんなに経ったんだね・・・元気でいてよ」
メイシ―ともハグ。
ハーウッドとの3人目の子供、オーギュスト・クレイは、世帯を分けて、姉カミーユの家の隣に引っ越しました。
無邪気で明るくて、時にノーテンキ。
まあ、君なら大丈夫でしょう。楽しく毎日を過ごしてね。くれぐれも調子に乗りすぎないようにね!
さて、後は、ハーウッドとヘンリーを埋葬するだけです。
残った2人で、さくっと済ませてしまいましょうか。
「・・・サブリナ」
「あたしも、戻ることにする」