モンテ・ヴィスタ。
料理人とスポーツ選手の街。
そう聞いて、私はこの黄金の太陽と城壁の街に住むことを決めた。
男性も女性も優しくて、愛情深くて、とても素敵な街だと思った。
隣人はルイス・トレド。
彼はとても気さくで慕われていて、自宅にはよく街の人たちが遊びに来ていた。
私もその1人。
かつての偉大なシェフと聞いて、料理が好きな私はレシピを教えてもらったりして。
最初は気のいいおじいちゃんね、なんて思っていたけど、だんだんと。
だんだんと。
「この街の情熱的な日差しがとても好きだ」
あなたがそう言うから、私は自分の野暮ったい暗い髪を、この街の太陽の色に染めた。
その髪を、あなたはとても綺麗だねとほめてくれて、キスをして、肌をあわせて、とても幸せだった。
でも。
あなたは彼女を選んでしまった。
あなたと彼女が一緒にいるところを見て、おんなじ速度で歩いているのが羨ましくて。
でも、きっと、そういう幸せの方が、あなたにはふさわしい気がして。
さよならを告げた。
この土地の男性は、女性を皆とても大切にするけれど、私は誰かの1人になりたい。
彼女のように。
「・・・ここなら泣いても大丈夫よね」
もし、もし、彼と友達のままでいたら。
心惹かれた人が彼でなく、別の誰かだったら。
私はどうなっていたんだろうか。
私はその時、幸せだったんだろうか。
あの日々よりも?