不倫相手ガンサー・ゴスとの間に2人の子供を産んだアドリアナ・カイザー。
いつまでもこの関係を続けているのもよくないと、何度も別れようとして別れられず・・・。
とうとう決心した彼は、コーネリアと離婚し、身一つで彼女のもとへ来てくれたのでした。
ガンサーと一緒に暮らし始めてしばらくして。
「お前は私を愛していないのか?」
「それだけはありえない」
「ならば、なぜ」
「結婚がすべての愛情の証明じゃないわ。私たちにはギルバートがいる、ガートルードがいる、アントワーヌが産まれた、それだけで十分だもの」
「だからこそ、私はお前と夫婦になりたいと言っているんだ」
「・・・ガンサー、前にも言ったでしょう? 私はいつも、いつでも、自分の立場をわかっていたいの」
「・・・」
「子供たちはともかく、私はカイザーのままでいい。私に『ゴス』を名乗る資格はないから」
ガンサーが離婚し、アドリアナたちと一緒に住み始めたので、心機一転、引っ越しをしました。
といっても、上物は同じで、場所を変えただけ。
ゴス・マナーの対面に位置する、ビストロ脇の坂を登ってすぐの土地、250 レッドウッド通り。もとは「ワーグナーの休息」があったところです。
最初は、「ワーグナーの休息」を何とかリフォームして、と思っていたんですが、元の家、65 メイウッド通り「モダーンハウス」をリフォームした家への思い入れが強くて、建物ごとの引っ越しにしました。
隣が、ガンサーの元義妹アグネス・クランプルボトムってところが微妙ですが、何かここしか考えられなかったので強行。
海と街が一望できて、とてもいい場所です。
そして、2人の子供たちは、1つ年をとりました。
ガートルードは、ちょうど小学生にあがるあたりでガンサーが来てくれて、これまであまり知らなかった父親の愛情をたっぷり受けた故か、ちょっとファザコン気味に育っています。
一方、ギルバートは父親がいなかった家庭を守ろうと精神的に頑張ってたせいか、ちょっとマザコン気味・・・というか、家の父親役をやっちゃいがち。
ガンサーへの敬意や愛情は勿論あるんですが、そのへんは三つ子の魂ナントヤラでしょうね。
ガートルードに対しても、兄貴でいるのはもちろん、父親的な感情で接しているようにも見えます。
・・・って、ガートルードはともかく、ギルバートは父の会社のメンバー集めて誕生日パーティまでしたのに・・・なんで全く写真が残ってないんだ・・・。
慌てて古いデータを引っ張り出して撮りました。
いやあ、若ガンサーですねえ、そっくりよ。
残念ながらガンサーの赤毛は遺伝しなかったけど、黒髪はゴスの血だと思うので、それはそれで。
生活は順調です。
ガンサーはゴス家名物「気難しい」が入っていて、脈絡もなく怒鳴ったりすることがあるんですが、不思議と家族にはほとんどやりません。特に、アドリアナにゴチャゴチャ言ったことは皆無。
気難しい特有のマイナスムードレットはよくつくけど、見える行動は常に上機嫌で、彼女の話をよく聞き、穏やかに過ごしています。
愛しているんだねえ。
と、プレイヤーはニマニマ。
彼の心の中には、移住後、かなり早い段階から「アドリアナと結婚する」という願いがあります。
けれど、アドリアナにはそれがない。家族志向で超ロマンチストのくせに、好きな人と一緒に暮らしていても、結婚しようという気はないみたいです。
「・・・アドリアナ、聞いてくれ」
「お前が、私とのことで幸福を制限しているのは見ていて辛い。お前のせいではないんだ。たとえお前のせいだとしても、それ以上に私の責任だ」
「違う、私が・・・」
「お前はそうやって否定するだろう? だから私もお前を否定する。同じことだ」
「・・・そうね・・・」
「過去の過ちは改めなければならない。私はコーネリアとモティマーにできる限りのことはするし、一生、彼らのことを忘れることはないだろう」
「当たり前よ」
「だがな、それでもやはり、お前への気持ちが勝るんだ。愛している女には幸せになってもらいたい。してやりたい。だから、お前はもう少し自分を愛しんでくれ。もう私がそばにいるんだ、それを大切にしてほしい」
「・・・」
「それすら無理か?」
「・・・夢があるの」
「ああ」
「朝、目が覚めたら夫の寝顔が隣にあって、みんなで一緒の食卓を囲んで、いってらっしゃい、おかえりなさい、いただきます、おやすみなさい、当たり前に家族の挨拶がこだまする家。あなたと私の特徴がまざった子供がたくさんいて・・・喧嘩しても、文句いっても、それでも『うちの家族が一番だね』って言える家庭」
「いいな」
「でも、いつも、あなたが残してきた人たち、私が傷つけ続けていた彼らを思い出す。それがとても重い」
「・・・そうだな」
「この罪悪感を抱えたまま、それでも私の夢を叶えてくれる?」
「当然だ。そのためのプロポーズだろう?」
「・・・」
「『ゴス』の名が重荷か?」
「むしろ、それを汚しちゃいけないと思ってる。だから頷けないの」
「アドリアナ」
「私は何も持たずにここに来た。家も、財産も、全て。本当ならば『ゴス』の名も置いてくるべきだったんだろうが、私のルーツを捨てなかったのは、お前に、せめて、それだけでも受け取ってもらいたかったからだ」
「・・・ええ・・・」
「『ゴス』という名前がどれだけ大層なものかは知らんが、私の一生を形づくるものであることは確かだ。私自身なんだよ、アドリアナ。だからこそ、お前に貰ってほしい。私は間違いなくお前より先に死ぬ。その時、元の名に戻るも好きにするといい。ただ・・・今は、ともにいる少しの間だけは、私の名前でいてくれないか?」
「ガンサー・・・」
「私は全て話したぞ。改めて言う。夫婦になろう」
「『はい』って言うまで、離してもらえなさそうね」
「言おうが言うまいが、離すつもりはないがな」
「・・・離れるつもりもないわ」
「もしも別離があるとしたら、それは死だけでありたい」
「ええ、きっと」
天に在らば比翼の鳥、地に在らば連理の枝、死が2人を分かつまで。
のんびり不定期に、つづく。